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2013年07月04日

第27回稽古場リポート|劇団ハンニャーズ「ウルトラリップスII」

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6月末日。前作【ウルトラリップス】で好評を博し、さらに短期間でのシリーズ化に挑んだ最新作【ウルトラリップスII】の公演を控えた劇団ハンニャーズさんの稽古場にお邪魔してきました。今回は私、演劇歴1年未満の素人・内藤陽介が、老舗劇団ハンニャーズさんの主宰・中嶋かねまささんや役者さんに、本作の見所や舞台作りに対するコアなお話を伺ってきましたので、稚拙な文章ながらご紹介させていただきます!
なお、前作【ウルトラリップス】に関する稽古場リポートと合わせて読んでいただけると、劇団ハンニャーズさんをより深く知ることができます!

第11回稽古場リポート|劇団ハンニャーズ「ウルトラリップス」
http://reynouneibu.seesaa.net/archives/201303-2.html
(以下、インタビュー内では敬称略させていただきます。)


内藤)まず、【ウルトラリップス】のシリーズ化は最初から決まっていたんですか?
中嶋)下心みたいなものがあったんですが、一つ作品の世界観を作るのはすごく難しいので、シリーズ化することでなんとか楽ができないかなと思ったのは確かです(笑)。もし前作の評判が良かったらやりたいなと思ってましたし、大コケしたらシリーズ化もしないつもりでした。
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内藤)“主人公・七浦千里とお兄さんの過去の出来事”という伏線があったので、単純に続編があるのかと思っていました。
中嶋)実はあまり考えてなくて、できれば物語を重ねる毎に七浦と兄に何があったのかをどんどん解明していきたいんだけど、今回はまだ2回目だからほとんど進展がないです。ただ七浦は大切なものを悲惨な形で失ったというキャラクター設定にしたかったので、それで亡きお兄さんにかかわりを持たせているといったところです。…すごく正直に答えています(笑)
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内藤)(笑)ということは、【ウルトラリップスIII】もまだ未定ですか?
中嶋)できればウルトラリップスは完結させたいと思っているのですが、いかんせん役者がどんどん年をとっていくので、そことの勝負になると思います。実は【松崎バックチャックス】という作品を1、2と作ったけど、3を作ろうとしたら出ている男役者4人が年をとり過ぎてしまっているという…。30前後の面白おかしい男たちのお話なのに、みんな40近くになってしまっていたんです(笑)。その辺がテレビとは違って、舞台作品は時間がかかってしまうのでトントン拍子にはいかないですね。ただ、なんとか三部作くらいにしてIIIにはこぎつけたいとは思っています。
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内藤)今回はキャストを一般募集していましたが、例えばテレビのミステリードラマのように主要人物とは別に毎週違う犯人役を登場させたい、というような意図はあったのですか?
中嶋)それはありました。今現在ハンニャーズの固定の役者が数えるほどしかいないし足りないんです。今回の主軸の3人(小出佳代子さん、近藤聡実さん、山田好宏さん)以外でフルで稽古に出られる役者がいないので、そうすると他の役者さんはどうしても客演や一般公募になります。今回は一般公募で集まってくれた4名と劇団の役者を合わせた7名でできる事件をやろうと思ってやったら、無茶苦茶難解な事件になりました(笑)。
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内藤)ということは、今回の脚本は当て書き(先に役者を決めてから、その役者をイメージしながら台本を書くこと)なんですか?
中嶋)そうですね。完璧に当て書きとは言えませんが、最初のほうに客演さん含め全員で基礎練習を一緒にしていく中で、「この人はこのくらいならできるんだろうな」というのを見込んで割り振っていったようなかんじです。
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内藤)その基礎練習についてなんですが、劇団の役者さんも客演の役者さんもある程度の経験者だと思うのですが、「基礎練習」とはどんな意図でやられたのですか?
中嶋)演出によって目指して欲しい演技、役の組み立て方、舞台上での在り方、というものがあって、自分の劇団員はオレの言葉をわりとすぐ理解してくれるんだけど、新しい方(客演さん)だと“共通言語”を持つ機会がなかなかなくて、稽古を通してだと染み込み方が緩くなってしまう。なので、基礎練習を通してどういう風に演技を組み立てていってほしいかを理解してもらう必要があったんです。
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内藤)例えばどんなことをしたのですか?
中嶋)最終的に3つの基礎練習に落ち着きました。1つは“考えながら感じる、感じながら考える”ということをしながら動くことを一人ひとりに叩き込んでもらいました。2つ目に体の皮膚感覚について。うーん…(しばらく考えて)例えば「そこはちょっと体を光らせてくれないか」「水の中にいるみたいに軽くやってくれないか」「もう少し力強く、粘土の中で動くように」といった力加減とか、役者の舞台上での皮膚感覚(イメージ)を演出と共有する作業ですね。最後に歩き方。歩行練習ですね。まっすぐ軸をぶらさないで体幹を意識しながら歩く練習をしました。
発声とかではなく、共通の身体感覚で演出と会話ができるように行いました。これらは一朝一夕では生まれるものではないので、時間をかけてやる必要があったんです。客演さんの方が上手だったりすることもあります。うちの団員は決して器用ではないし、長年付き合っている分「こういうやり口でくるだろうな」というのは大体予想ができる。そこを突き破っていってほしいという意味でも“考えながら感じる、感じながら考える”ということを通して「舞台でぼーっとしている時間なんて無いんだよ」ということをもう一度思い出してやってほしいという意図もありました。


内藤)ハンニャーズさんはコントをやっているという印象を持つ方も多いと思うのですが、ミステリー作品を作るにあたってコントとは違う点、または意識して変えた点はありますか?
中嶋)よく聞かれるのですが、自分の中では(作り方は)ほとんど一緒です。例えばコントであればこの台詞でお客さんに笑ってほしいという意図がある。それが伝わってなければコントとして成立していないと思うんです。偶然にできてしまった面白さやライブだからこそ出る“ちょっと間違って変な間になって面白い”というのはあまり信用してなくて。何度でも繰り返せるものが本物だと思っています。このタイミングでお客さんに笑ってほしいから、それまでの伏線や会話の流れをきちんとわかって欲しい。ミステリーでも、伏線や会話の流れ、演技から、ある台詞で「ああ、こういうことだったのか!」と全部納得してもらいたい。だから、納得しつつ驚いてもらうという瞬間にたどり着くまでの工程というのはコントもミステリーも自分の中ではあまり区別がないんです。
私のやってる演劇というのはどちらかというととてもテレビ寄りなんです。演劇でしかなし得ない表現というのも大事だけれども、それよりも単純にお客さんに余すところなくわかって欲しいというのが本当の願いです。…その割に話が複雑になってて全然わからないって言われちゃうんだけど(笑)。びっくりさせたい、なるほどって思って欲しいって考えながら芝居をやっています。
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内藤)つまり、狙ったところで笑ってもらう、または納得・驚いてもらうというスイッチが違うだけで、伏線を張ったり会話の流れを作るといった工程自体は同じだということですね?
中嶋)自分にはそのやり方があってるなと思っていますね。役者が突発的にやってなんとなく面白くなったというシーンを繰り返せればいいんです。繰り返せないのならばあっという間に劣化して数日後には全然面白くなくなるから、そこの区別はなるべくつけるようにしています。
演出の仕事は交通整理だとよく言われますが、役者には“決まった道路の中で”ものすごく動いて欲しいんです。この中だったら何やってもいいよっていう。その道路の上ではない場所で演技をしたときには「それはやめてね」って言います。特に今回はシリーズの2作目で、前回の世界観を引き継いでいる部分があるので気をつけています。
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内藤)ハンニャーズさんの舞台は音楽・映像・舞台セットがすごく凝っているという印象があるのですが、これらも「わかりやすく伝えたい」という意図の元で作られているんですか?
中嶋)実は、昔はBGMとかって気持ち悪くて一切使わなかったんです。「なんで演技してる最中に後ろから音楽が流れるの?そんなのあるわけねぇじゃん!」って思ってて。でも音楽が入ることによって役者が想いにもう一歩乗れていくというか。音楽の力って絶大だから、ちょっと悲しい音楽が流れている中で悲しいことを言えばすごく悲しくなるし、それがちゃんと反映されるんだなって。
今回はミステリーで、ここは気持ち悪いシーンですよ、ここは本当のことを言ってるシーンですよっていうのをできればわかりやすく提示してあげたいなと思っていて。今まででは考えられないくらいBGMを多用してますね。文字映写に関しても同じです。観てもらえばわかりますが、今回のウルトラリップスIIはたぶん難解だって言われると思います。自分でも書いてて、まぁなんとかまとまったんですが、とにかく謎解きが複雑です。なので、どの台詞を聞いていればわかるのかっていうのを音楽とか文字映写を流すことによって、この部分の情報が絶対に確かだというのを刷り込んでおく必要があります。お客さんが迷子にならないように、本当に大事なシーンには音楽がかかっている可能性があります。
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内藤)テレビだと回想シーンなどを挟むことができるからわかりやすいですもんね。
中嶋)そうそう、でも(舞台に)回想シーンを入れるとものすごくもったりしてしまうんです。基本的には役者が発する言葉からしか(謎の解明が)わからないので、そのサポートとして音楽や文字映写を使っています。

内藤)…そうなると、台詞の間違いとかも一切許されないかんじですよね?
中嶋)あるあるあるある!前回はいろいろあったんだけどね(笑)。(エピソードは面白かったんですが伏せます。笑)
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内藤)そういう怖さはありますか?
中嶋)役者が一番怖いと思う。でも、間違えられないけど、謎解きは授業やプレゼンテーションではなくエンターテイメントでなければならないからね。間違えられないけど、「間違えられないだけでは済まされない」というプレッシャーは、役者にとってものすごいものがあると思います。
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内藤)最後に、ウルトラリップスってどういう意味なんですか?(今更すみません…)
中嶋)七浦が謎解きになるとすげー喋るから、「むちゃくちゃ喋る唇」という意味が一つ。あとは乙(きのと)がスフィンクスで、「でっかい口で食べちゃうぞ」という意味のウルトラリップス。…あんまり深い意味はないですね。笑
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なんとこの日は初の通し稽古!という訳で贅沢なことに、筆者は一足お先に物語の全貌を見させていただきました。感想は…いや、ここはぐっと抑えます(笑)ただ、これは前作を観たときも思ったのですが、「脳みそを引っかき回される快感」が前回以上にありました。100%は理解できなくても、終わってみると大事なポイントは何故かつかんでいる。だからこそもう一度!いや、もう繰り返し観たい!という欲に駆られてしまいました。これは自分が普段感じる「一度聞いただけでは全部を理解できない音楽の方が何度も聴きたくなる理論」に似ている気がするのです(飛躍してますが。笑)
個人的な意見ですが、この作品は会話の相性がいい相手と一緒に観るのがオススメです。一筋縄にはいかない「謎解き」に話の花が咲くことでしょう。っていうか、早く観て僕とお話してください←
なお、前作【ウルトラリップス】はなんとYou Tubeで丸々視聴できますので、前作を見逃した方、これを機に気になって仕方がない方はぜひご覧ください。



最後に、出演者の皆さんにもお話を伺いました!

七浦千里役の小出佳代子さん
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内藤)今回の見所はどんなところですか?
小出)今回は奇跡のメンバーが集まっています。出たいと言って応募してくれたメンバーのそれぞれが個性派で魅力的なので、前回よりもパワーアップしてると思います。前回観た方も、繋がっている部分もあるので楽しんでいただけます。
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内藤)七浦千里という役に対してはどんな想いがありますか?
小出)Iのときは、七浦は稽古の途中までこんなキャラクターじゃなかったんです。いろいろやっていって最終的に今の七浦になりました。今回は最初からできあがっていたのですっかり愛着があります。「こういう人だよね」という感じですんなり入り込めています。
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内藤)細かい癖などもすごく作りこまれている印象でした。
小出)あ、それは私の素の癖が入り込んでるかもしれないです(笑)

客演参加の樋口祐二さん([en]Jya輪舞曲)
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内藤)どんなきっかけで出演に応募したのですか?
樋口)ずっとハンニャーズさんの舞台は出てみたいと思っていました。団員の方とは交流があったので、何かタイミングがないかと思っていたところ、ちょうど一般募集をしていたので「これしかない!」と勇気をもって応募しました。
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内藤)他の劇団さんへも客演として出演されることが多い樋口さんですが、そういう中でのハンニャーズさんの印象は?
樋口)役者さん間の「見えないチームワーク」がはっきりとわかるのがすごいと思いました。長年の付き合いがあるからこそだとは思うのですが、舞台に立つとすんなり流れが繋がっていくのが驚きでした。中嶋さんの演出も的確ですし、すごいなと思うことが多い2ヶ月間で、日々勉強させていただいています。
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内藤)最後に公演を楽しみにしている方々へ一言!
樋口)絶対面白い作品ですので是非見に来てください。観に来たらわかると思います!何度でも何度でも観て欲しいです。

客演参加の後藤忠彦さん劇団@nDANTE
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内藤)他劇団への客演参加が初めてということですが、所属劇団と違う点はありますか。
後藤)まず、練習メニューが全然違いました。うちの劇団は若いのでみんなで意見を出して考えて作っていくスタイルなのですが、ハンニャーズさんでの稽古はとても的確な指摘をいただけるのでとても新鮮でした。
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内藤)基礎練習をしていたと中嶋さんにも伺いましたが、いかがでしたか?
後藤)出されたお題を基に、4W1H(いつ、どこで、誰が、何を、どうした)を瞬間的に考えて30分くらいのお話を演じる、ということをしました。稽古の前にそれをやることでとても引き締まりますし、それぞれの演技の方向性や大事にしていることが分かってくるので、自分で考える力もつきました。
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内藤)では、公演を楽しみにしている方々へ最後に一言!
後藤)難しいことはわからなくても、純粋にミステリーの基本軸である「犯人探し」を楽しんでほしいです。今回は「何を犯人と捉えるか」というところも難しいところでもあるので、それも踏まえて答え探しを楽しんでほしいと思います。

最後にリポートを振り返って。稽古場に早めに着いたこともあって、僕の後に続いて役者さんが集合してきたのですが、その瞬間から空気の糸がピンと張るのを感じました。役者同士、他愛もない会話をしていたのも束の間、念入りな発声練習や準備運動が始まり、役者間の入念な確認作業。「それが当たり前」と言われればそれまでですが、この作品に真剣に向き合う役者さんたちの熱量をオーラとして感じられたことが僕にとって何よりの収穫でした。やはり、マジな人達はかっこいい!そして役者さん同士が役名で呼び合う様子にも、物語への没入を垣間見た気がしました。今から公演が楽しみです!あ、自分の出演する公演もありますけどね!←

++インフォメーション++
劇団ハンニャーズ本公演第27弾
「ウルトラリップスII」
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会場:シアターent.
日時:2013/7/13(土) 〜 2013/7/20(土)
料金:大人1800円/高校生1000円(当日300円増)
ご予約・お問合わせ
メール:hannya-s@mail.goo.ne.jp
電 話:080-5534-8828
劇団ハンニャーズ
http://828s.3w.to/
※正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。

[補足]
会場(シアターent.)はこちら

大きな地図で見る

文責:内藤陽介
posted by 「例の掲示板」運営部 at 08:55| 新潟 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 稽古場リポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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